『アークスI・II・III』<ARCUS I・II・III>

発売日 1993年7月23日
定価 8800円
メディア メガCD
メーカー 日本テレネット(ウルフチーム)
内容  さまざまな種族や精霊たちが住む世界を旅する、
 3DコマンドRPG。ところどころでアニメー
 ションや声の会話が流れる。パソコン版3部作
 を元にしている。


 「ゲーム3本ぶんがまとめて一枚のCDで遊べる」と言うと、とてもお買い得
な気がする。が、この『アークスI・II・III』は、一本ずつ切り離して見てみる
とあまり内容が濃くない。量的には、3パート合わせて一本ぶん、という感じだ。

 ビジュアルグラフィックの輪郭線は太めで、ていねいに描かれている。建物や
ダンジョンだけでなく、さまざまな場面に3Dが適用されており、螺旋(らせん)
階段、トラップの表現方法などがユニークだ。しかし、ダンジョン3Dの表示は
何だかおかしい。描きかたや配色が悪いせいで、左右に道があることがわかりづ
らい。慣れるまでは、短距離テレポートしながら移動しているような気分だった。
オートマッピング機能があり、ボタンひとつで簡単にマップを見ることができる。
階段の位置だけでなく、宝箱がすでに開けてあるかどうかまでマーク表示されて
便利。ただ、自分の周囲しか映さないので、スクロールで全体表示できたほうが
いいと思った。

 謎と呼ぶべき謎はないが、旅は苦しい。ゲームバランスが良くない。特にIIが
キツかった。ダンジョン内での敵遭遇率が低いのがかえってアダになり、レベル
はなかなか上がらない、魔法も覚えない、お金が稼げない、装備も充実しない。
回復手段とレベルがじゅうぶんでないのに比較的簡単にダンジョンの奥まで行け
てしまうから、全滅しやすい。瞬時移動手段がないせいで、てくてく徒歩で行き
帰りするはめになることもあり、めんどうくさい。
 敵は、2〜3度くらったら気絶してしまうほど強い魔法を団体で唱えてくる。
敵の魔法&特殊攻撃はバラエティに富んでいるのにこちらの攻撃・防御はおそろ
しく単純、かつ不利だったりする。気絶した状態に体力回復魔法をかけるだけで
復活、レベルが上がると体力などが全回復するのはありがたいが、回復場所や店、
セーブポイントにたどり着くまでがやけに遠い。補給に帰る道中で全滅させられ、
かなり以前のセーブポイントに戻ってやり直しになったことが、何度もあった。
ダンジョン内セーブができないので、プレイヤーが受ける時間的&精神的ダメー
ジは非常にデカい。

 毒を抜く魔法を誰も唱えられないのに、毒消しアイテムの値段がけっこう高い。
手持ち金が少ないので、たくさん常備しておくことができない。手当することも
脱出することもできないまま、キャラクターは毒による消耗で倒れこむ。毒をく
らったキャラをそのまま歩かせ、倒れたところで回復させるという手荒な方法を
取るしかなかった。体力がゼロになると、なぜか毒は抜けるのだ。(毒持ちキャ
ラが歩くとガッションガッションと音がして、まるでロボットのよう。ピカピカ
光るよりはマシだが←これはまぶしい)
 III の終盤では「いいかげんにしてくれ」と言いたくなるほど敵が襲ってくる
地帯がある。自分たちもかなり強くなっているので負けることはないが、「1歩
で敵、また1歩で敵」が連続する。タメ息が出る。4歩あるけたらギネスブック
だ。私は根性でパッドを投げ捨てるのを思いとどまり、うさ晴らしに「誰だぁ、
こんなにたくさん続けて敵を出すようにした奴はー!」と見えない開発者に向か
って叫んでいた。

 戦闘終了後、一定のレベルに達すると、いくつかの種類の中から好みのタイプ
の称号を選択でき、それによってキャラクターの能力が変わっていく。しかし、
曲を替えるか画面をいったん停止させるかしてくれないと、選択肢が出ているこ
とに気づきにくい。他の戦闘終了メッセージを送るのと一緒にうっかり決定して
しまい、誰の称号を決めたのかすらわからなくなる。方向キーでメッセージを送
るようにすれば誤決定は防げるが、慎重に選べるよう、気を使ってほしかった。
おそらく、どの称号を選ぶかによってゲーム進行の楽さが変わってくるのだから。
 称号の種類は多く、説明書で説明されているものが全てではないので、どんな
タイプになるのかわからないまま、名称から想像して決めなければならないこと
もある。全称号の特徴が説明書に載せてあってもよかった。

 数多いキャラクターのそれぞれに個性と魅力がある。ストーリー上、ちょっと
唐突だな、と感じる展開も見受けられたが、独自の世界を描くことには成功して
いると言えるだろう。呪文を唱えるときや「励ます」コマンドを実行したとき、
声入りでしゃべるのが楽しい。キャラクター性が出ている。キャラクターによっ
て唱えかたがちがうし、励ます相手によってセリフも異なってくる。そのキャラ
が他のキャラのことをどうとらえているかがわかり、おもしろい。レベルが上が
ると、魔法使用時の消費ポイントが少なくなっていくシステムもいい。
 戦闘中のメッセージ送りは、妙に反応が遅れるので不快だ。最速スピード設定
でも遅い。メッセージ文は「、」や「。」が行の左端に来ていることが多いのが
気になる。行頭禁則処理をしていないので見苦しい。装備時にはステータス変化
値が同時表示されるが、アップダウンを色分けすれば、パッと見てもっとわかり
やすかっただろう。

 曲や効果音の出来は良い。音がよく響く。少しファルコム系の雰囲気がする。
声は、ところどころ曲にかき消されて聞こえにくいところがある。タイトル画面
で放っておくと歌つきの主題歌(これが結構いい)が流れだすが、私がそれを聴
いたのはゲームクリア後だった。タイトル画面ですぐにスタートボタンを押して
しまっていたため、気がつかなかったのだ。ボタンを押せばキャンセルできるよ
うにして、CD立ち上げ直後に流したほうがよかったかもしれない。

 シナリオ・ゲームシステムともに、もうひとつ深みが足りない。表現しようと
していることはけっして悪くないのだが、技術とセンスが追いついていない感が
ある。忍耐をもってプレイすれば一応遊べるものの、「やっぱり日本テレネット、
なるほどウルフチーム」と悪い意味で納得してしまう、ストレスのたまる作品だ。


'95 3/24 NIFTY-Serve FCGAMEM
     SEGAゲームマシン会議室 #7532(改稿)
                  (登録日 '97/1/15)
ソフト発売1993年7月備考なし