『ナイツ』では、ナイツ以外に少年少女のキャラクターも操作できるようになっている。これには、
・キャラを替えて遊ぶと気分転換になる
・男女どちらのプレイヤーにも親しみを持たせる
・現実世界の人物を出すことで感情移入しやすくする
といった効用がある。ただ、二人のキャラクター設定に関しては少し「惜しい」と思った。彼らは基本的に才能と環境に恵まれた人間であり、悩みがあるにしてもその底が浅い。
「現実に妥協して夢と希望を失いかけている人たちよ。あなたの中に眠っている勇気に、どうか気づいて−−」
このテーマを強くプレイヤーに訴えかけるには、主人公はもっとドン底の状況に落ち込み苦しむ不運な人間のほうが、より効果的だったのではないだろうか。夢を最も切実に求め、信じたいと願っているのは、そういった人びとなのだ。現実と夢の世界をしっかりと対比させてこそ、夢世界の輝きは一層ひき立つ。が、優等生を主人公にしたことでビジュアル的にはきれいにまとまる反面、プレイヤーが自分自身の状況へテーマを投影するだけの現実感には少々、欠けてしまった感がある。
また、システムが独特なのに説明が不十分なまま実戦に突入するやり方は、どうしても取っ付きにくい印象を与える。素晴らしい世界のすべてを見ることなく、あきらめて投げだす人が出る危険性が高いのは、やはりもったいない。『ナイツ』は、やり込めばやり込むほど楽しくなるゲームなのだから。
リングの連続通過による大量得点やアクロバット技のコツを覚えれば、曲芸飛行はもうやみつきになる。いかにうまく飛ぶか、ボスを早く倒すかによって最終得点に差が出るため、最高ランクを目指してのスコアアタックも熱い。それぞれ単独でプレイでき、1プレイあたりの時間が短いおかげで気軽に少しずつ遊べるステージ構成も、忙しい現代人にとっては嬉しい作りである。できるだけ真っ白な心で、ぜひ最後までプレイしてみてほしい。気流にのって飛翔する爽快感、風をきってスピーディに突き進むここちよさを、きっと味わえるはずだ。