【ゲームレビュー(8)】
プレイステーション
『スターフォックス64』
(2/2)
 基本的に、64版はSFC版と似たような流れを汲んでいるが、様々な点で、その性質は異なっている。特に注目すべきは、「SFC版が“個”のゲームだとすると、64版は“集団”のゲームである」という点だ。これは、単に「SFC版は1人プレイ専用で、64版には対戦モードがある」「SFC版が結果的にマニアックな狭い層を対象としていたのに対し、64版はより多くのプレイヤー層を想定している」といった意味だけにとどまらない。「プレイ中、プレイヤーの注意がどこを向いているか」が違うのだ。  前作では仲間が撃墜されて戦線を離脱しても、「あ〜あ、しょうがないな」と思うくらいで、さほど困らなかった。どちらかというと「ひとりで戦っている」感じが強く、仲間たちは主人公フォックスのリーダー性を演出するためのものでしかなかった。今回は仲間の特殊能力をゲームシステムにからめ、セリフを大幅に増やすことで彼らの存在感が増し、チームを組んで協力して戦っている感じが出ている。常に仲間の存在を意識し、助けたり助けられたりする「仲間とともにいる温かさ」を、前作で感じることは少なかった。その点、64版はチームプレイという設定を活かしきっていると言える。  しかし、弊害もないではない。声がひんぱんに入ることによって、プレイヤーの画面への集中度は下がる。状況を説明されると、知らず知らずのうちにそれに頼る。前作では、たまに出てくるセリフは簡単なカタカナのメッセージ+意味のつかめない効果音だったので内容を感覚的にとらえていたが、今回は嫌でも頭の中に言葉の洪水が押し寄せてきて、そちらに気をとられてしまう。メッセージと展開が密接につながっているため、メッセージを完全に無視するわけにもいかず、声を消す設定変更はゲーム開始前にしかできない。そのうえ、横360度の視界で戦うオールレンジモードでは、レーダー部分を見つめる時間が長い。ゲーム全体を通して、目の前の画面だけに集中しにくくなっているのだ。もちろん、そうすることでしか表現できない面白さもある。この作品の場合、演出が魅力的で、イベントで見せる狙いは成功している。だが一方、自機との一体感が前作より薄れたことを改悪と考える前作ファンも、少なからずいるのではないだろうか。
 私の場合、セリフの大量挿入よりも気になったのは難易度であった。SFC版で鍛えられたおかげで全ルートをクリアするのは前作ほど大変ではなかったし、ずっと記憶に残るであろう名場面はいくつかあっても、「苦労に苦労を重ねた末、ようやくクリアした際の充実感」は残念ながら、あまりなかった。だから私は、このゲームを難しいと感じる人がうらやましい。根気さえあれば、SFC版を全力で遊んだかつての私のように、きっと大きな感動を得られるだろうから。それだけの完成度を有しているのは間違いない。最初はなかなか進めなくても、プレイ回数を重ねるごとに敵やアイテムの出現位置を覚え、動きを見切れるようになり、ミスが減っていく。何度も挑戦しているうちに少しずつ上達していく絶妙のゲームバランスは今回も健在だ。
 現在、NINTENDO64はファミコンやスーパーファミコン時代のような圧倒的シェアを誇っているわけではない。ソフト発売ペースがライバルの他機種より遅く、ソフトの種類も少ないと、一本一本にかかる責任は重くなる。ソフトの売れゆきはハードの運命を左右する。主軸を担う任天堂の自社ブランドソフトならば、なおさらだ。その結果、「より多く売れること」という命題を第一に背負わされ、難易度を手加減した一般うけしやすい内容にせざるをえないのだとしたら、少々残念だと思わずにはいられない。
 確かに、より難しいモードを隠しておくことで、熟練者への配慮もなされてはいる。繰り返し遊べる奥深さはちゃんと備えている。が、難易度を変えてみても、その場面を一番最初にクリアしたときの嬉しさにはやはり及ばない。私はできれば、SFC版くらいの苦労をしてこのゲームをクリアしたかった。そうすれば、もっと感動できたはずなのだ。前作と比べて、初心者向けに変質した『スターフォックス64』を見ると、これはこれで良い作品だと認めつつも、どこか寂しく思う自分がいるのである。
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