【ゲームレビュー(7)】
プレイステーション
『ウィザードリィ外伝 I』
(2/2)
 ふむふむ、ずいぶん親切になっているわけだ。それでは、この外伝は難易度が低くなっているのではないか? そう考えるのは甘い。戦闘はかなりシビアで、油断するとアッという間に全滅する。てごわい敵が団体で出現し、最強呪文をぜいたくに使ってもなかなか倒せない。“マロール”が使いやすくなったおかげでマッピング完成は速いものの、ゲーム進行にキャラクターの成長が追いつかず、あせるとボコボコにやられる。システムが親切になっても、このシリーズの特徴である難易度の高さや、一歩一歩進むときの緊張感はちゃんと保持されているのだ。
 どうやら開発陣には「このくらい難しくなければウィザードリィじゃない」というこだわりがあるらしい。WIZの魅力を知り尽くしている制作スタッフだな、ということが伝わってくる。確かに、三日くらいで楽々クリアできるものなど、断じてウィザードリィではない(笑)。
 それにしても、敵は容赦なく強い。宝箱には意地悪な罠がしかけられ、解除に失敗すると悲劇が待っている。蘇生の試みはしばしば失敗する。キャラクターは灰になったり復活したりと忙しい。ひとつのパーティが全滅し、助けに行った新パーティもまた同じ運命をたどる。作成可能なキャラは20人までで、それが20人とも全滅すると、もうガックリきて遊ぶ気力がなくなりかける。しかたなく私は、まずい結果が出たら自動セーブされてしまう前に即、電源を切ってやり直すことにした。もちろん、「自分はそんなズルはしないぞ!」と、あくまで信念を貫き通すのも結構だ。誰も止めやしない。ただし、ゲームクリアに恐ろしく時間がかかることは覚悟せねばならない。もっとも、ある一定レベルまではキャラクターの成長が速いので、追いつくのはさほど大変ではないだろう。
 敵が強いため、電源を切ってやり直す回数は必然的に、非常に多くなる。これがもしCD−ROMソフトだったら、再立ち上げに時間がかかりすぎて、とてもまともに遊べないものになっていたにちがいない。ROMカセットだからこそ、また、これだけ熱中できる面白さだからこそ許される戦闘バランスだといえる。
 −−GBとウィザードリィ。
 これはプレイヤーの魂を吸い取る、魔性の組み合わせだ。ただでさえ中毒性の高いゲームが、いつでもどこでも気軽にプレイできるハンディマシンと結びついたら……その効果は倍増どころではない。一度とりつかれたら、なかなか手放すことができない。外伝といえどシリーズ独特の雰囲気を損なうことなく、充分な解きがいと手ごたえとを備えており、WIZの世界をたっぷり堪能できる、納得の仕上がりとなっている。
リスト2 MENU
TOP