【ゲームレビュー(6)】
プレイステーション
『ブレス オブ ファイア3』
発売:1997年9月11日
メーカー:カプコン
ジャンル:RPG
☆シリーズ第3作め。プレイステーションでの発売・第一作。
安定した力量を感じる、良質RPG

 機種がスーパーファミコンからプレイステーションになって、グラフィックが一段と良くなった。キャラクターの仕草が非常にこまかく描かれていて味わい深い。ビジュアルの見せ方やイベント内容、敵キャラの攻略法など、いろいろなアイデアを随所にちりばめた繊細なつくりだ。種類ごとにアイテム欄が分類されているシステム画面も使いやすい。快適な操作性である。
 今回は、画面が切り替わることなく、歩いているとそのままその場で戦闘に入る。状況によって敵と味方の位置どりが四方に変わり、その場所の背景グラフィックが戦闘背景となる。毎回の戦闘画面の背景と構図に変化が生まれ、印象がワンパターンにならない。戦闘終了後はすぐに歩き出せるので、移動への復帰もすばやい。さまざまな種類の声が入るようになったことで、戦闘時のキャラクターがとても活き活きしている。  この作品のキャラクターたちには、どこか野性味があって好きだ。お上品に宿屋に泊まるゼイタクを避け、無料の野宿をする。野宿の方が自由な旅をしている感じが出るし、いちいち宿屋まで戻る面倒くささもない。キャンプすると、仲間のセリフを聞くことができて親しみがわく。
 フィールドは全体マップと拡大マップで構成され、入り組んでいる。目的地へ到着するまでに結構迷う。次にどこへ行けばいいのか明確に指示されない時もあり、あちこち回って目標を見つけださなくてはならない。前作では道中の戦闘量がかなり多くて忙しかったが、今回は全体マップ上では基本的に敵が出ず、「!」マークが出た時にボタンを押すと、戦闘画面へ移動する。フィールド上では最低限の戦いだけで済ませられるようになっているのだ。好きな時に好きなだけ、現在の自分たちの強さに見合った敵と任意で戦えるこの方式は、「弱い敵でも(わずかな経験値&お金と引き換えに)強制的に 戦闘へ突入させられる」という、従来のRPGが持つストレスをやわらげている。必要以上に戦闘に邪魔されることなく、ゆっくりとゲーム世界の空気を呼吸でき、フィールド上をのびのびと歩き回れるのが良い。それでいて戦闘にはちゃんと手ごたえがあり、ボス戦では「戦闘不能になって復活するたびにHPの最大上限値が下がり、どんどん不利になっていくペナルティ」がつく。「倒れてもすぐ復活できるから、いいや」などと安心しているわけにはいかず、出来るだけ戦闘不能にならないようにしなければならない。そのため、戦いに緊張感が生じる。
 戦闘不能のまま戦闘終了すると、HP上限値は減少したままだ。これはキャンプでは回復できない。本来の数値に戻すには宿屋に泊まるしかない。ちゃんとベッドで眠らないと疲れを完全にとりきれないという、納得の設定。もしこのルールがなければ、わざわざお金を出して宿屋に泊まらないだろう。野宿システムがあるせいで宿屋という設備を無意味にしないよう、ちゃんと考えられている。
 欠点らしい欠点が見つけられないくらい、システム・物語ともによくまとまっていて質も良い。あえて気になる点を挙げるなら、途中のミニゲーム的イベント部分が少々、いきづまりやすいことだろうか。苦労しただけあって突破できた時の喜びはひとしおなのだが、コツが要るから、人によっては挫折しかねない。それと、実益をかねた釣りゲームやミニ育成シミュレーション、竜変身の組み合わせ研究、キャラクターの成長具合が変化する「師匠」システム、敵の技を習得する「見る」コマンド、属性攻撃を予防する注射などのアイデアは面白いのだが、いまひとつ活用する必要性が薄い。プレイヤーが積極的に利用しないと、せっかくのアイデアがあまり活かされないうちにゲームが終わってしまう。もっと物語の展開にからめて、使う機会を多くしたらよかったと思う。しかし全体的には、細部までていねいに心をこめて仕上げられたつくりに、とても好感が持てた。楽しめる作品である。

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