ゲームレビュー(4)
(2/2)
プレイステーション
『第4次スーパーロボット大戦S』
 声入りということ以外にも、『〜S』のプレイ感覚はSFC版とは少し違う。原因は音楽だ。SFC版ではフィールドの曲と戦闘の曲がそのつど切り替わるのだが、『〜S』では味方ターンで攻撃目標を指定した途端に、そのキャラクターのテーマ戦闘曲が始まり、戦闘終了後もその曲が持続する。つまりフィールドの曲は、毎ターンの最初にしか流れないのである(敵ターン時には、戦闘時でも敵側のフィールド曲しか流れない)。これは、おそらくデータ読み込みの関係で、ゲームのテンポを損なわないようにしたためと思われる。キャラクターのシリーズごとに曲が次々と切り替わるので、まるでカラオケメドレーのような様相を呈する。戦闘の曲を長く聴ける利点はあるが、慣れるまで妙な感じはする。フィールド曲のノリがいい場合、わずかしか聴けないのは寂しい。それからもうひとつ、機種の違いによる差といえば、SFC版がデータセーブをほぼ瞬間で完了するのに比べ、PS版では若干待たされることが挙げられる。

CD−ROMならではの魅力

 全体を通して、扱うユニット数が多いが、なるべくそれぞれのキャラの影が薄くならないよう配慮されており、戦闘バランスをとりつつ、見せ場がつくられている。ユニットの活かしかた・絞りこみかたがうまい。多種類のアニメの物語をひとつの世界にきちんと織り込み、出来るだけていねいにわかりやすく展開させている。しかしそれでも、何種類もの名称を持つ複数の組織が混在し、人物もたくさん出てくるため、ストーリーはちょっとややこしい。しっかりメッセージを把握しておかないと、訳がわからなくなりやすいかもしれない。
 シナリオタイトルあるいはキャラクターの言動などから、局面の展開をある程度予測できる。全体マップを参照すると、だいたいこのあたりから援軍が来そうだなという予感がするので、それにそって作戦をたてる。予想したところから敵が現われれば「ほ〜ら、やっぱり出ると思った」と、ほくそ笑む。意外なところでフイをつかれれば「しまった! そう来たか」と己れの油断を悔やむ。戦況がやけに楽勝ムードなら、「むっ、このままで終わるはずはないぞ」と気をひきしめ、じゅうぶんに準備しながら奇襲にそなえるのだ。
 シミュレーション系ゲームは、「何をまず第一にすべきか」「どういう順番でやるのが一番効率がいいか」「注意すべき点は何か」「温存していた力を、いつどこで出すか」といったことを、事前によく考えて行動することの大切さを教えてくれる。考えるのと考えないのとでは、結果に雲泥の差を生じる。このゲームには各面にいくつかの危機的状況が設定されており、うまく戦略を立てて戦わないと失敗するようなゲームバランスになっている。ゲームオーバーになると凄く悔しい。考えて行動することがいかに大切かを痛感する。様々な要因をシミュレートして思考トレーニングできる面白さを、たっぷりと味わえるのが楽しい。

 今回、『第3次〜』のときのような、“胃の痛くなるような容赦ない攻撃”というほどの死闘は少なく感じられた。精神コマンドをフル活用してうまく立ち回れば、全滅することはあまりない。ただしこれは、前作をすでにクリアしてコツをある程度つかんでいるからこそのことであって、初めてプレイする人は(攻略本などを見なければ)最初はボコボコにやられるかもしれない。結構キツい面もいくつかある。(『第4次〜』がスパロボシリーズ初挑戦だったうちの弟は、終盤でどうしても勝てなくなり、挫折してしまった。「ゲームオーバー画面から経験値そのままで続行できるよ」と教えても、「最初からやり直す」と言う☆)
 シリーズファンには手ごたえを感じさせ、初心者にも楽しめるようにするバランスどりは大変だと思う。同シリーズ『スーパーロボット大戦EX』にあった難易度設定は、この点を考慮した末の、ひとつの試みだったのだろう。だが、このシリーズでは多少難易度は高くても、どうすればゲームが面白くなるか、ワクワクするか、という点にかなり心がくだかれているので、安心してプレイしていられる。

 状況に応じたメッセージの種類が豊富に用意されていて、これまでのシリーズ同様、細かな違いを楽しみながら何度も遊べるつくりだ。そして、さらにPS版では声を入れることで、SFC版にはなかった効果も生まれている。SFC版では乗組員が数名いる機体を変形させることや、変形バージョンを全部均等に育てること、パイロットの乗り換えなどが少々面倒で、ついつい使用するパターンを固定させてしまっていた。しかし『〜S』では、いろいろな声を聞きたいがために、埋もれてしまいがちなキャラクターを出場させてみたり、あまり使うことのなかった弱い武器も試してみようかな、という気が起こりやすい。その結果、自然と、作品の奥深さをより深く知ることができるのだ。SFC版『第4次〜』に、「声が入ることによってもたらされる相乗効果」という新たな魅力を付加したのが、この『第4次〜S』なのである。

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