サガシリーズの魅力とは何か。いろいろあるが、私は、そのひとつは最終戦だと思っている。「これまでの蓄積はこの瞬間のためにあった、つちかってきた力のすべてを今、全力で放出するのみ!」と真剣に戦闘に臨ませる、空間の演出がうまいのだ。この作品のボス戦もそれぞれアイデアがきいていて面白いが、クリア後の達成感の強さは少々弱いと感じた。クリアまでの時間が短いと、長いプレイ時間をかけて自然と感情移入させる効果は望めない。「何のために戦うのか」というキャラクターの心理が、プレイヤーの気持ちと同調していてこそ、戦いは盛りあがる。キャラクターとつきあう時間が短いなら、そのぶん印象的なエピソードなどでうまく演出するべきところだが、シナリオによっては描写の密度が薄く、肝心な部分の説明が抜けているため、主人公への感情移入が弱まり、クリアしても余韻より疑問のほうが強く残ってしまうのが残念だ。プレイヤーの想像力にゆだねるためにあえて描写しない部分をつくる手法ももちろんあるけれど、ストーリー性の濃い設定で奥深い物語展開を期待させるわりには掘り下げが足らず、中途半端な感じがするシナリオがいくつかある。あまりきっちり話を追いすぎて窮屈になるのも何だが、クリア後の「長い長い旅の果ての達成感」の弱さを補うためにも、話の重要な部分をていねいに描写してほしかった。ゲーム世界の構築も、若干、練り足りない印象を受ける。あともう少し密度濃く仕上げてあるとよかったのではないだろうか。
じつは、連携の面白さを知るまでに至らなかったせいか、体験版を遊んだ段階での第一印象はあまり良くなかった。メッセージウィンドウが透明なため、文字が背景に埋もれて読みづらい。細かいところまで凝った雰囲気ある背景グラフィックも、慣れるまではゴチャついて見え、どこが通れる場所なのかはっきりせず迷う。基本的にダンジョンからの瞬間脱出は出来ないので、次の展開への手がかりが見つからないと、歩き回ってばかりで話が全然進まない。プレイヤーの行動をがんじがらめに縛らず、未知の世界を旅する自由な空気を大切にしたゲーム展開はこのシリーズの本質ともいえる特徴だが、自由度の高さは、なかなか事件が起こらないことへのいらだちをも引き起こしやすい。特にこの作品では、時としてアドベンチャー部分と戦闘部分が極端に偏る。戦闘のない状態であまり長く歩かされると戦闘好きのプレイヤーはイライラしてくるだろうし、何度戦っても勝てない強烈な強さの敵に行く手を阻まれれば、地道にザコ戦を繰り返してキャラクターを鍛えるしかない。それでも、「こんな苦労も楽しさのうちさ」と、道中の過程そのものを味わう気持ちが、このゲームにおいてはとても大切なのである。