ゲームレビュー(2)
プレイステーション
『ファイナルファンタジー8』
発売:1999年2月11日
メーカー:スクウェア
ジャンル:RPG
☆RPGシリーズ第8作め。PSでの発売は2作めとなる。
好みが分かれる? 劇画調キャラ

 子供向けから大人向けになったような印象の、スラリと背の高いキャラクター。前作より洗練され、グラフィックは一層リアルになった。しかし、仕草やファッションに個性は出ているが、等身が長いためか遠景画面が多く、キャラクターとプレイヤーの間に心理的な距離感が生じる(メニューの最初の画面にキャラクターの顔イラストも表示されない)。たまにアップの場面があっても無表情で生気がなく(ムービーシーンは良いのだが)、魅力があるような、ないような……。例えるなら、「子供の頃に仲の良かった友達に、成人してから再会したら別人のように変わっていて、違和感がある」のと似ている。昔からのFFファンの中には、以前のような“かわいい系”キャラの方がいいという人も、少なくないかもしれない。
 キャラクターデザインは個人の好みの問題だが、感情移入を妨げている最大の原因は、シナリオの流れが良くないことだ。
 2つの視点が交互に切り替わる構成は興味深いのだが、キャラクターそれぞれの描写が中途半端で展開も不自然なので、「なぜいきなりそーいう話に?」「自分は今、どうしてこんなことをしているんだ?」と、だんだんわけがわからなくなってくる。セーブや画面切り替えが速く、基本操作は快適である反面、「ちょっと動かしただけで意図していない方向へ移動してしまう」「次にどうしていいかわからず、いきづまりやすい」などの不親切な箇所もいくつか見受けられる。

あまりにも強すぎるザコ敵

 たいていのRPGでは、敵の強さは場所ごとに決まっている。「ある地域に出現する敵に楽勝できるようになったら、より強い敵のいる別の場所へ向かい、だんだん成長していく」というのがパターンだ。ところがFF8では、同じモンスターでも、味方のレベルに比例して強くなる。これは通常戦闘に手ごたえをもたせる良い工夫だ−−と思いきや、同じ場所でずっと戦ってレベルアップすることができるため、ゲーム中盤ですでに、主人公のレベルが最高値になってしまったりする。
 「ザコキャラ一匹がボスキャラよりも強く、倒すのにやたら時間がかかる」という逆転現象が起こってしまう結果、本来、最も盛りあがるはずのボス戦がひきたたない。目的地へ到着するまでのザコ戦が長引きすぎると、物語の勢いも止まる。さらに、敵のHP量や特徴を詳しく知る魔法“ライブラ”を簡単に使えることが、「敵をいつ倒せるかわからないスリル」「自分で試行錯誤して攻略法をあみだす楽しさ」を薄れさせている。ザコ敵との遭遇なしで進める方法も用意されているので、プレイヤーが自分で調整すればいいとはいえ、もう少しバランスどりが必要だったように思う。

やはり光る、システムの面白さ

 以上、戦闘バランスやストーリー展開などに問題はあるものの、今回も、普通のRPGとはチョット違ったアイデアがいろいろ盛りこまれている。G.F.(ガーディアンフォース)と呼ばれる召喚獣を身につけて魔法を装備する“ジャンクション”と、魔法を吸収してストックする“ドロー”。コマンドRPGにつきものの“MP”(マジックポイント)を廃止して魔法を個数で扱い、パワーアップエネルギーとして利用する斬新なシステムである。大幅に画面デザインが変わったFF7以降、魔法は“FFらしさ”を保持する、大切な要素だ。強力なG.F.の存在によって戦闘時における有効性が薄れる魔法を、この両システムがきちんとカバーしている。
 さすがに、時代の先端を走って業界の手本・刺激剤にならねばならないFFシリーズは、人気に安住して「前作のシステムをそのまま使い、キャラとストーリーだけ変える」というようなことはしていない。グラフィックの凄さをウリにして、ゲーム性を軽んじているわけでもない。ただ、「新しい面白さを提供しようとするチャレンジ精神」だけでなく、「作品の完成度を高めること」をもっと大切にするべきだ。そうすれば、FFはきっと、無敵のRPGシリーズになることだろう。

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