ゲームレビュー(10)
プレイステーション
『百の世界の物語』
発売:1996年7月5日
メーカー:アスク講談社
ジャンル:
☆ボードゲームの楽しさを取り入れた、一風変わった対戦型コマンドRPG。人間同士による4人までの同時プレイ、対コンピュータ戦、観戦モードがある。
 いつからだろうか。RPGで遊んでいてレベルアップに感動しなくなったのは。どきどきしながらの旅が本当に楽しかった『ドラゴンクエスト』において、戦闘は大変魅力のあるものだった。レベルアップの音楽が鳴り響くと、とてもうれしかったのだ。
 あれから、雨後のタケノコのように多くのコマンドRPGが発売された。傑作にもいくつか出合った。しかし最近は、レベルアップをさめた目で見ている自分に気がつく。
 コマンド入力による機械的な戦闘に楽しみを見出せない。完全に作業と化してしまい、疲れる。本来、主人公の成長は単なる数字のレベルアップで表されるものではなく、ストーリーの展開上でエピソードにからめて見せるべきものであるかもしれない。が、もしも戦闘というものがRPGというジャンルになくてはならないものなのだとしたら、退屈な戦闘が物語を味わうことを妨害している作品が多い現状は、好ましい傾向とは言えないだろう。
 『百の世界の物語』は4人同時プレイもできる対戦RPGだ。コマンドRPGにボードゲームをプラスしたような感じ。なかなか両者がうまい具合にドッキングしていて、テンポよく楽しめる。
 小気味いいレベルアップの応酬。イベントを達成したり町の人の頼みごとを果たしたりすると次々と経験値がはいり、どんどんキャラクターがレベルアップしていく。次のレベルまでに必要な経験値はいくつかな、なんて気にする必要はない。そんなことを考える暇もないほど景気よくレベルが上がるのだ。とても気分がいい。疲れない。対戦相手に負けないように競争するのでドキドキする。
 RPGだというのにセーブ機能がない。パスワードもない。一回こっきりのシナリオで制限ターン内のクリアを目指すのみ。いやでも長時間つきあわされるストーリー重視型RPGとは違い、「気楽にちょこっとだけ遊んで終わる」ことができる。プレイのたびに町の名前やイベントの発生のしかたなどがランダムに変わるので、同じシナリオでも完全に同じパターンにはならない。
 非常に魅力的なゲームシステムだと思う。この作品自体は容量の関係もあってか、ある程度遊びつくしてしまうと物足りなさを覚える。グラフィックもさびしい。底が見えるのは早いかもしれない。が、このまま埋もれさせてしまうにはあまりにも惜しいシステムだ。もっとより深く練り込み、シナリオ数も増やした『千の世界の物語』なんて発売されないものだろうか。私は買うぞ。RPGに初めて触れたころのあの感動をよみがえらせるためのヒントが、この作品には隠れているような気がする。
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