ゲームミュージック 第六十九回 (2012/4/10) 
ドラゴンクエスト・スペシャルコンサート('97/8/30)
(【注】なんと、10年以上前に書いた、ドラゴンクエストコンサート日記!
 パソコンからファイルを発掘したのでアップしておきます。
 書きかけなので、書き足りてませんが☆)
 ヘンな夢を見た。  現実世界では120%起こりえない、想像するだけでもおぞましい類いの、夢。 しかし夢の中の私は、その状況をおかしいとも思わずにふるまっている(夢とは そういうものだ)。そして−−。ふ……と目がさめた。  ……現実世界の感覚が戻ってくる。とんでもない夢を見たものだと思いつつ、 部屋を見回す。いま、何時だ? ノートパソコンのワープロの時間表示を見る。 午後、1時15分すぎ。  しまったぁーーーーっっ!! 寝過ごした!  なんてことだ、今日は楽しみにしていた「ドラゴンクエスト・スペシャルコン サート」の日だというのに! 基本的に夜型人間の私は、昼間動くのはツラい。 ちょっとだけ眠って起きるつもりだったのに、やはり目覚ましをかけておくべき だったか。2時の開演まで、あと45分もない。どう計算しても間に合わない!  ともかく、あわてて家をとびだし、JR駅へ到着、ダイヤ表示を見る。あいに く新快速はなく、特急や急行もなかった。普通列車で名古屋駅まで最低30分。 こんなとき、テレポーテーション(瞬間移動)が使えたらと思うが、残念ながら 私に超能力はない。おとなしく電車に運ばれるのみ。  落ち着け、沈着冷静に振る舞え。それが円熟した大人の態度というものだ。と 自分に言い聞かせる一方、もし途中入場できなかったらどうしよう、なんで肝心 なときにポカをするんだバカ、などと心底情けない気分になってきて、どうにも 落ち着かない。  ようやく名古屋へ着き、タクシー乗り場まで走る。時間があれば地下鉄で行く のだが、もうすでに2時を回っている。今はお金より時間のほうが大切だ。列を なして待機しているタクシーの先頭の車に乗り込み、叫ぶ。 私:「しらかわホールまでお願いします!」 運転手:「しらかわホール……?」  運転手さんはその場所を知らなかった。初めて行く私も、もちろん知らない。 赤信号待ちしている間に、パラパラと地図帳をめくる運ちゃん。……何だか不安 になってきた。が、チケット予約のときに電話で聞いておいた、地下鉄駅からの 道順と町名を伝えると、だいたいの場所はわかってもらえたようだ。何とか30 分遅れくらいですみそう、とホッとして、シートに背をあずける。ん? ふと気 がつくと、道が結構渋滞していてノロノロとしか車が進んでいない。もっと速く 走ってくれ〜。これで初乗り運賃が610円なんだから、よほど急いでいる人か 面倒くさがりやの人か金持ちの人しか、タクシーに乗ろうとは思うまい。  しばらく走ってようやく目的地へ着いた。料金は880円。財布を開く。小銭 では足りない。一万円札しかない。このとき、私は嫌な予感がした。 私:「すみません、これでお釣りを」 運転手:(釣り銭箱をさぐる)「……あ、こまかいの無いや」  グワァーーン。なんか、95%の確率でそうくると思ったんだよね(笑)。どう するんだー。小銭を数え直しても、やはり足りない。と、そのとき。運転手さん の天の声が聞こえた。 運転手:「その小銭全部でいいよ」 私:「えっ? いいんですか!?」  なんと、小銭あるだけ払ってくれればそれでいいと、おっしゃってくださって いるのだ! 初乗り運賃どころか400円にも満たない、10円やら5円やら1 円やらが混ざった片手いっぱいの小銭を渡して、タクシーを降りた。私がとても 急いでいる様子なのを見て、商売を半分捨ててくださったのだろうか。あそこで 万札を両替しに行っていたら、少なくとも3分はロスしたに違いない。 (ありがとうございます、やさしい運転手さん。これからは機会があったら出来  るだけタクシーを利用するようにします)  感謝の気持ちをささげつつ、先を急ぐ。入口はどこだ。あ、警備員の人がいる。 聞いてみよう。 私:「あのっ、入口はどこでしょうかっ?」 警備員:「……名フィルの人?」  一瞬、返事ができない。よく見ると、そこは裏口付近なのだった。 私:「ちがいます……観客です……」  ああ、そう、といった調子で彼は表入口の方向を教えてくれた。それ、急げっ。 玄関口へ走り込む。「いらっしゃいませー」と受け付けの人の声がかかる。その とき、館内放送されているかのような音量で、聴き覚えのある曲が流れてきた。 (ああ、この曲は−−)  曲名を思い出す暇もなく、受け付けの人が「まずはあちらのチケット売り場で チケットを購入してください」と指示してくれる。すぐにチケット売り場へ走り、 予約時に教えてもらった番号を伝え、4000円払って券を得た。パンフレット ももらう。 「こちらへどうぞ。ご案内します」  階段を上がり、演奏会場へ急ぐ。 「いらっしゃいませ」  進む先々で何人もの案内の女の人たちが迎えてくれる。その物腰は洗練されて いて気分のよいものだった。なつかしい曲が流れるなか、きれいなホール内を小 走りで進んでいると、ゲームの世界に入り込んだような気分になる。そして−− ようやく会場の扉の前へたどり着いた。 「演奏中は入れませんから、終わったらご入場ください。まっすぐ行ったところ  に席があります」  今、演奏中の曲は『ドラゴンクエストIII』の「冒険の旅」。5曲めのプログラ ムだ。くそー、4曲も聴きそこねてしまった。くやしいけれど、自分が悪いのだ から仕方ない。会場の外で曲を聴きながら、時間がたつのを待つ。よし、演奏が 終わった。  扉を開いて中へ入る。小学校の体育館を少し小さくしたくらいの広さ。狭いほ うが、音の通りがいいのかもしれない。照明は意外に明るかった。作曲・編曲・ 指揮を担当する、すぎやまこういちさんが舞台の中央に立ち、次の曲の演奏前に 曲についての話をしている。途中で入場するのは勇気が要った。それがどれだけ 周りの人や演奏者にとって迷惑であるか。場の雰囲気を乱してしまうのだ。ごめ んなさい、ごめんなさいと四方八方にテレパシーを送りつつ、自分の指定席につ く。幸い、席は後ろのほうにあった。これが前のほうだったりしたら、私はとて も度胸がなくて、そこまで行けなかっただろう。  初めて聞く、すぎやまこういちさんの声は、予想した通り、あたたかだった。 動作もどことなくユーモラスで、少年の純粋さをまだ残している人だと感じた。 話が終わると、曲の演奏に入る。市販CDのアレンジバージョンを聴いたときの ようなオーケストラが流れ始める。違うのは、音の響きだった。迫力がある。前 の席にいるほど、音の振動が伝わってきそうだ。今度行くときは早目に予約して 出来るだけ前のほうの席をとりたいと思った。

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