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【ゲームボーイ】
『MYSTERIUM』
発売日 1993年7月23日
定価 4500円
メーカー バップ(→メーカーホームページ
内容  3Dダンジョンを探索するアクションアドベンチャー。


 タイトルは「ミステリューム」と読むらしい。箱のタイトル表示や、説明書に
も読みがなが打たれていないので、タイトルが読めない人もいるのではないだろ
うか。特にゲームボーイは低年齢層の子供たちがよく遊ぶマシンなのだし、英語
がわからない場合もあるはずだ。タイトルが読めないと買いにくいから、損だと
思う。まぁ、読めなきゃ読めないで、このゲームの持つ摩訶不思議なイメージが
倍増して、いいのかもしれないが。

 この作品は3Dダンジョンで敵と戦ったり、アイテムを取ったりして進んでい
くゲームである。主人公は錬金術師の弟子になったばかりで、試練として“MY
STERIUM”の世界へ送り込まれる。ある物質を他の物質に変成させ、必要
なものをそのつど作りだしながらダンジョンを下へ下へと降りてゆく。目的は、
錬金術を修得し、悪のドラゴンをやっつけること。
(「錬金術(れんきんじゅつ)」
 →すべてのものを精錬し、金(きん)に変化させようとした昔の科学技術
 (古代ギリシア・中世ヨーロッパ)[三省堂・新明解国語辞典 第三版より])

 電源を入れ、スタートボタンを押した次の瞬間、いきなりバーンと出てくる蟻
(あり)の大アップ。けっこうショッキングな登場だ。この蟻は“MYSTER
IUM”への案内役で、全身アップで手足&顔をカクカク動かしながら説明を始
める。以後、マップクリアするたびに出てきて、その動きを披露してくれる(蟻
が嫌いな人にはたまらんだろな、これ)。“MYSTERIUM”は蟻さんたち
が掘った世界なのである。
 曲が何種類かあってマップごとに切り替えてあり、ゲームが単調になりがちな
のを救っている。何度も挑戦するたび曲が頭の中に刻み込まれていく。雰囲気が
あって好きなリズムだ。ひとつマップクリアすると画面が下方スクロールし、下
へ降りていっている感覚が伝わってくる。『ウィザードリィ』や『ダンジョンマ
スター』に影響を受けている感じはあるが、独特の個性が感じられる。こういう、
「奇妙で、プレイする人を選ぶかもしれないが、とにかく堂々と我が道をいって
いる作品」に出会うと、「やはりマイナーゲームも捨てがたい」とつくづく思う。
プレイヤーのことなど全然考えてない、というのは困るけれど、この作品のよう
に見かけは少々地味でも、じっくり遊んでみればじつに楽しめるゲームも数多く
存在する。

 アイテムを4種類の井戸に落とし、錬金術でいろいろなものに変えられるのが
おもしろい。組み合わせによってすごい武器がつくれたり、めずらしいアイテム
になったり。敵が出現してしまうこともあるので、生成の瞬間はドキドキする。
 あまり何度もアイテムの姿を変化させすぎていると、ハマりになることもある。
扉を開けるには、その扉に合った鍵を作らねばならないのだが、ちがう鍵ばかり
残って、もはや変成させるべき材料もないとなると、もうお手上げである。最悪
の場合、装備している武器まで材料にしても失敗する。ハマると電源を切るしか
なくて、つらい。何かいい方法があるのだろうか。私はいくら試しても解決策が
見つからなかった。

 敵に遭遇するとリアルタイムのアクションになる。攻撃するにはボタンを押し
て、戦闘モードに切り替えなければならない。向こうに気づかれたら途端にバシ
バシ攻撃してくるので、こちらも負けずにボタン連打。するとその攻撃が当たっ
ていたのだろう、無事倒せる、という具合だ。攻撃のしかたはちょっとわかりづ
らい。当たってるのかはずれてるのかがよくわからない。
 戦いによって自分のHPがゼロになると死ぬ。3回まではアイテムそのままで
復活させてもらえるが、やがてはコンティニューが尽き、一番最初からやり直し
になってしまう。このゲームにはセーブ機能がない。パスワードもない。
 だが、もしセーブができたら短時間でゲームが終わってしまい、つまらなくな
っていたかもしれない。この作品では「スタートしてからセーブなしで、いかに
うまく行動し、目的を果たすか」がポイントである。幸い、各マップが小さめの
ためか、やり直しになってもそれほど苦痛ではない。「今度こそうまくクリアす
るぞ!」と思うことができる(最後の最後でダメになったときはさすがに悲しい
が)。ダンジョンにもぐって失敗するたびにいろいろなことを学び、コツがつか
めていく。次からはもっと上手に動けるようになる。

 最下層の凝った仕掛けはハンパではない。それまでの階で学んだ知識を総動員
してその場に必要なものを作りだし、道を開いて最後の敵の元へと向かう。最下
層の謎を解くには、各物質の変化のしかた、巻物に書かれた文章、クリスタルに
浮かぶ言葉などを、しっかりと理解・把握しなければならない。こういう謎解き
が好きな人には涙が出るほど楽しい。逆に、ややこしい謎が好きでないなら、最
下層どころか最初の階をほんの少しうろついただけで挫折しやすいゲームだとい
える。敵との戦闘に勝利してもあまりメリットはない。ただ体力を消耗するだけ
だから、余分な戦いはできれば避けて通ったほうがいい。謎さえ解けていれば、
最後の階からいきなり始めてもクリアできる。それまでの階のすべては、最後の
謎解きのためにあるのだ。

 この謎の複雑さは、ひと昔前のパソコンゲームを思い浮かべさせる。とてもじ
ゃないが、記憶に頼ってクリアすることは不可能だ。ノートか何かに要点を書き
つけていかないと、とうてい最後の敵には会えない。もし何もメモせずにクリア
できたら、すでにあなたは錬金術マスターである(笑)。このゲームをクリアした
後、手元にはたくさんの研究メモが残る。ほんとに錬金術を勉強している気分に
ひたれて、なかなか良い。
 「3Dダンジョンの、あの緊張感が好き」「ヘンなゲームなら、まかしとけ」
「謎解きは大好きだ!」という人に、おすすめしたい。……ただし、根性が必要
かもしれない。
'93 9/17 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ハンディゲームマシン会議室 #283(改稿)
(登録日 '97/4/23)
ソフト発売1993年7月備考なし

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