私はゴエモンシリーズをプレイするのはこの作品が初めて。アクションのほう
では遊んだことがない。しかし、ていねいに描かれた魅力あるキャラクターのお
かげで、抵抗なくゲーム世界に入ることができた。全体に神経がゆきとどいてい
て、開発者の愛みたいなものが伝わってくる。敵キャラの動き、メッセージ関係、
その他細かいところにあれこれと手がかけられており、遊んでいてほんわかした
気分になれる。曲のノリも良く、テンポよく遊べるのがいい。
「ゴエモンが家宝として大切にしていた“黄金のキセル”が何者かによって盗
まれてしまった。一大事だ!」というわけで、主人公のゴエモンは旅に出る。家
宝が盗まれた、しかも天下の大泥棒が逆に盗みに入られるなんざぁ、プライドが
ど〜あっても許さねぇ……。旅に出る動機としては充分である。RPGで最初に
出てくる目的が、「私はボランティアをやってるワケじゃないんだ」なんて思わ
せてノリ気にならないものであるのは、イントロとして失格なのではなかろうか。
最初で感情移入に失敗すると、それから先の展開にも期待できなくなってしまう。
その点、この作品はじつに納得できる出発の仕方になっている。
ゲームはごくごく普通に展開する。悪く言えばワンパターンなのだが、説明書
なしでも気軽に楽しめるRPGだとも言える。ダンジョン内マップは意外に広い。
敵との遭遇率は低くないが、オートバトルが可能なのでかなり楽だ。もしもこの
自動戦闘がなければ、快適さはずいぶん違ったことだろう。
戦闘バランスが良く、ちょっと先へ進みすぎてもいきなり全滅することはない。
お金がたまるのも速く、装備をばっちり買ってから進める。ボスもちょうどよい
強さ。一度フル回復すると結構長い間もつので、自分の力を信じて旅ができる。
店内などではイラスト表示になり、入ったとたんに用件にうつれてスピーディ
だ。「カウンターまで歩いていく→たまにスッと横に移動してフェイントをくら
わす主人に座標軸をあわせて話しかける」という作業が省かれていて楽である。
宿屋や店の中に会話すべき人々が存在せず、その他の場所でもヒントキャラが最
小限におさえられているので、歩き回ってのヒント収集に疲れ果てることもない。
ただ、装備関係のシステムにはちょっと不便を感じた。メッセージスピードをゲ
ーム再開のたびに設定し直さなければならないのも面倒(おまけに、「はやい」
でもあまり速くない)。
途中までは、非常に楽しくプレイできた。しかし残念なことに、あるポイント
でいきづまってしまった。よもやハマるとは思っていなかったので少しショック。
スーパーファミコンのRPGでも、「次にどうしていいかわからず、そのまま放
り出してある作品」を私は結構かかえている。自分を基準にして、自力で解けな
いようなのは謎のかけかたがヘタなのだ、などと思いはするが、当然なんなく解
ける人もいるわけである。簡単には投げださないつもりだし、ある程度の謎なら
解ける自負はあるのだが、それでも、いきづまることがある。
幸い(?)、中古で買ったので、前の持ち主のセーブデータが残っていた。セー
ブファイルが複数ある場合、私は前の持ち主のデータで一番レベル値が高いもの
を消さずに残しておく。そして自分がクリアしてから、自分のと見比べてみる。
他のプレイヤーはどんな感じで旅を終えたのかと想像をめぐらせるのが楽しい。
自分が入手していないアイテムがあったりすると、「どこにあったのだろう?」
と気になったりする。
今回上書きせずに残しておいたデータは、ゲームクリア直前でセーブしたもの
だった。私はそれを使ってエンディングを見た。……後悔した。話の中盤で挫折
しているため、話が全然見えない。達成感や感動のかけらもない。ああ、RPG
って、いや、ゲームっていうのはやっぱり過程を楽しむものなんだなと痛感した。
道中をすっとばしてエンディングだけ見ても、無感動なのだ。
自分が気にいった作品だと、自力で解けないのは残念でたまらない。そういう
とき、ふと考えこんでしまう。
「これは自力で解けない自分が悪いのか?」
それとも、
「私に自力で解かせないこの作品が悪いのか?」……と。
|