『邪聖剣ネクロマンサー』

 私がPCエンジンで一番最初に買った&クリアした
ゲーム。PCエンジンが発売されてしばらくたった頃、
弟の友人が弟にPCエンジン本体を貸してくれた。彼
は金持ちの息子で、ゲーム機やソフトをたくさん持っ
ており、当時一番の注目作だった『R−TYPE I』
も一緒に持ってきてくれた。(ああ、持つべきものは
友だち)
 へえ、これがPCエンジンか。ずいぶん小さいんだ
ね。こんなペラペラのカード一枚でこんなにきれいな
絵が出るんだ、すごいなぁ、と『R−TYPE I』
のグラフィックの美しさに感心しながらも、私の心は
すでに『邪聖剣ネクロマンサー』やりたい! という
願いに占領されていた。

 そしてついに、自分でソフトを買ってきて、本体を
返す日までにクリアしてやろうという、少しムボーな
考えを私は起こしたのである。早速おもちゃ屋へとん
でいき、ソフトを定価で買う。目がさめるようなタイ
トル画面の美しさに見とれて、PCエンジンのグラフ
ィックはやっぱりキレイだ、おお、モンスターを攻撃
すると血がブシューッと出るぞ! これはすごい! 
などと喜びつつ(笑)、しかし、ゆっくりとプレイして
いる余裕はない。本体を何日借りていられるかわから
ないのである。友人君が「返してくれ」と言ってきた
ら、後は自分で本体を買うまで、プレイはおあずけに
なる。いきおい、ゲーム攻略に真剣さが加わってくる。

 数日後。

 やっとのことで最後のボスと対面する直前、タイム
リミットが来た。友人君が、返却を要求してきたのだ。
そんな……あともう少しなのに!
「ごめん! もうちょっとだけ、待って!」
 玄関先に友人君を待たせ(すまん!)、ボスと死闘
を演じる。やった、倒した! ボウ然としてエンディ
ングを眺め、ようやく本体を返す。ありがとう、友人
君。おかげで、すごくスリルある数日間だったよ……
まだクリアの余韻でドキドキいってる心臓の鼓動を感
じつつ寝転がる私に、発せられた弟のセリフは冷やか
だった。

「よーやるなぁ……」

 途中のダンジョンで一度いきづまりかけて、それが
「ちょっとこれは普通、わからないよな」と思わせる
ものであったこと(私が解けたのは偶然)、パスワー
ドが色違いの文字を使用していて書き取りづらかった
ことなどをのぞけば、楽しめたRPGである。

   →1988年1月