『ウィザードリィ』

 名作3Dダンジョン・コマンドRPG。『ウィザードリィ』は
もともと外国のゲームで、このFC版はその移植である(当時、
私がパソコンゲームの本などを見ていて、「ぜひ遊んでみたい」
と思ったのが『ウィザードリィ』と『ミステリーハウス』だった)

 遊んでみると、評判どおり、非常に面白い。敵が強くて難しい
のだけれど、とにかく熱中させる。グラフィックはシンプルで地
味、でも飽きがこず、緊張感をみごとに維持している。魅力的な、
戦いがいのあるモンスターたち……増殖するクリーピングコイン
の乱舞、かわいいウサギの姿で油断させておいて首をはねてくる
ボーパルバニー、クリティカルヒットが怖い忍者系の敵、個性を
主張するマーフィーズゴースト、シャレにならんぞヴァンパイア
(ロード)、もっと来い来いグレーターデーモン。呪文システム
もよく出来ていて、初めてティルトウェイトを唱えたときの爽快
感といったらなかった。使うとレベルが下がるハマン・マハマン
は、もったいなくて&恐ろしくて使えなかった。

 当時、難しすぎるゲームはわりと簡単に放り出していた私が、
何とかこの作品をクリアできたのも、それだけ面白かったからで
ある。このゲームでは、ある目的を達成すれば一応ゲームクリア
となるが、その後も引き続き、いくらでもダンジョンを探索して
楽しめるようになっている。
 ストーリー重視型RPGが、クリア後もおまけダンジョンなど
でダラダラ続くのは私はあまり好きではないのだけれど(例外は
ある。よほどその世界が気にいった場合は、ずっとそこで呼吸し
ていたくなる)、『ウィザードリィ』はシステム自体の魅力が強
く、戦闘が単なる経験値稼ぎの義務ではない。結果への到達より
も、過程を味わうことが楽しいゲームなのだ。

 FC版は、ダンジョングラフィックを二種類に変更できたり、
メッセージを日本語と英語に切り替えできたりと、システム面に
工夫がこらされており、遊びやすい。曲の出来も大変すばらしい。
『ウィザードリィ』というビッグネームゲームを日本のコンシュ
ーマゲーム市場に紹介するのに、この上なく抜かりのない気配り
がほどこされている。じつに、幸運な移植だったと言えよう。

   →1987年12月