『聖闘士星矢』

 週刊少年ジャンプで連載されていた、車田正美の同名
漫画がアニメ化されて人気が出て、お約束のようにゲー
ム化もされた。タイトルは「せいんと・せいや」と読む。
(「せいとうし・ほしや」ではない)

 あれは専門学校生の頃。近所の子供が「ゲーム教えて」
と言ってきた。どれどれ、どんなソフトかなとワクワク
して行ってみたところ、この『聖闘士星矢』が出てきた。
「男の子はやっぱりこういうのが好きなんだな」と思い
つつ、説明書をパラパラ見る。後ろには、その男の子の
おばあさんがふとんに横になっており(身体を少し悪く
していたのだ)、こちらの様子をニコニコしながら眺め
ている。う、緊張するじゃないか。
 教えるためには、まず自分が理解しなくてはならない。
少しの間、黙ってゲームをプレイしてみる。なるほど、
あちこち歩いて戦闘画面になったら、コマンド入力して
闘えばいいんだな。
 そら、必殺技いけぇッ!(あまりかっこいいとは言え
ないグラフィックで技が出た) よーし、もう一撃っ!
……ハッ。いかんいかん、つい自分の世界に入りこんで
しまった。このままゲームをクリアしてしまうわけには
いかない。今日は家庭教師役で来ているのだ。
 要領はだいたいつかめたので男の子にコントローラー
を渡し、そばで実況説明しながら補助をしてやる。敵を
ようやくひとり倒したときの彼の表情は、とても嬉しそ
うであった。そして、それを見るおばあさんも私も、何
となく嬉しい気分になったのだった。

   →1987年8月